研究概要 |
大気環境の総合的分析評価の一環として、メンプランフィルター上に薄層状に10μm以下と2.5μm以下に分級捕集した大気浮遊粒子状物質や、粒子状物質の長期的変化を知るのに好都合な空調設備バグフィルター捕集試料に対し、開発した系統的状態分析法の適用性を検討した。すなわち、有機溶媒・水・希塩酸で順次抽出し、これらの抽出液中の金属元素はICP発光分析装置で、F^-,Cl^-,Br^-,NO_3^-,SO_4^<2->,NO_2^-などの陰イオンをイオンクロマトグラフで、NH_4^+イオンをイオン選択性電極で効果的に定量できることを確かめた。測定の結果、大気浮遊粒子状物質の70〜80%が健康への影響が大きい微粒子であり、水溶性成分は試料中の40〜90%を占め、その60%以上が微粒子であることが分かった。S,Cl,Zn,Br,Pbは微粒子中に偏在し、V,Cu,Kも微粒子中に多かった。これらは水溶性成分中に多く、しかも地殻組成に対する濃縮係数が高く、人為起源物質が主に水に溶けやすい形態であることを示唆した。また、冬季に観測された高濃度時のClは主にNH_4Cl、Sは主に(NH_4)_2SO_4等の二次生成粒子であることを確認した。さらに、雨水は大気中のガス状物質及び粒子状物質と相互作用しつつ降下するが、含有成分の存在形態は生体への取り込まれ方を左右する。そこで、濾過・限外濾過による粒径・分子量別の分離と、反応活性な鉄やモリブデンの接触定量法とを組み合わせ、雨水中の存在状態を研究した。その結果、初期雨水では鉄の85%程度は反応不活性な粒子状物質として、残りの多くは分子量1000以下に活性な形態で含まれたが、粒子状物質にも活性な形態が認められた。これは鉄-フミン酸錯体の形成によって説明できた。また、Moの存在状態に鉄とフミン酸が影響することが分かった。
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