平成10年〜12年度の間に開発した半透明テフロン製の固定化酵素充填フローセルを用いて、実際試料への応用研究として、血清中のグルタミン酸の定量と鯖肉中のヒスタミンの定量法の開発研究を行った。特に、血清中に存在する妨害物質の影響の除去方法と新規標品ヒスタミンオキシダーゼの安定性について詳しく検討した。 1)同時固定化グルタミン酸オキシダーゼ/ペルオキシダーゼを充填したフローセルを用いる血清中のL-グルタミン酸の定量;塩基性領域で活性を有し、耐熱性酵素であるStreptomyces種由来のグルタミン酸オキシダーゼ(EC1.4.3.11)を選択し、Arthromyces ramosus由来のペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)をトレシル化法で親水性ビニルポリマービーズ(粒子径50μm)に同時固定化した。血清中に存在する還元性物質をオンラインで除去するため、固定化尿酸酸化酵素(EC1.7.3.3)と固定化ペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)を同時固定化酵素の前に充填した。まず、還元性物質でありルミノール化学発光反応を妨害する尿酸を尿酸酸化酵素により分解出来た。この酵素反応で生成した過酸化水素は下流に設置した固定化ペルオキシダーゼで分解出来た。この固定化酵素充填化学発光センサーにより2000個の血清試料を30/hの分析速度で正確に測定できた。 2)同時固定化ヒスタミンオキシダーゼ/ペルオキシダーゼを充填したフローセルを用いる魚肉(鯖)中のヒスタミンの定量;塩基性領域で活性を有する新規なヒスタミンオキシダーゼをArthrobacter crystallopietes KAIT-B-007から抽出・精製し、Arthromyces ramosus由来のペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)をトレシル化法で親水性ビニルポリマービーズ(粒子径50μm)に同時固定化した。鯖中に存在する還元性物質は試料調製のための前処理中に分解するため、上記のような還元性物質の妨害除去のための固定化酵素は充填しなかった。この固定化酵素充填化学発光センサーを用いて、50μMヒスタミンの115回の繰り返し注入によるピーク高の変動は1.25%以内であった。鯖肉中のヒスタミン濃度の測定において、本センサーと従来法であるHPLCとの相関は0.996であった。
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