表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用する化学計測は、プリズムに全反射光を入射するとプリズム上の金属膜とそれに接触している試料との間に発生するエバネッセント波と表面プラズモン波とが共鳴したとき、反射光強度が減光する、この現象を物質分析に応用しようとするものである。基礎的検討では、SPRのセンサーチップの金、銀の膜厚(50nm)、表面の平滑さを調べ応答特性との関係を明らかにした。各種物質の分析法については、センサーチップ上で分析対象物と良好に反応する高選択的素子または抗体を選びこれを含む高分子膜やその他の膜修飾法について検討した。まづ、亜鉛イオン感応素子として良好なテトラブチルチウラムジスルフィドを用い、これを含むPVCまたはPMMA膜溶液をセンサーチップの金膜上に固定化して亜鉛イオン測定を検討した。感度は、イオンセンサーに較べてやや低下するが、異なる選択性を示すことがわかった。つぎにチップ表面での抗原・抗体反応を利用する分析を検討した。金膜上に、メルカプトプロピオン酸またはメルカプトデカン酸を結合させ、Nーヒドロキシコハク酸イミドそして抗体を反応させてチップ上に固定化した。このセンサーチップに、抗原として人のABO血液型物質を通液して接触させ、入射光と共鳴する角度変化を観察することより、ABO型物質の簡便、迅速測定を可能にした。また異なる抗体をセンサーチップ上に固定化することより、腫瘍マーカーα-fetoprotein(AFP)の高感度(1IU)、簡便、迅速、高精度の測定を可能にした。その他酵素反応を利用する農薬、殺虫剤等の測定も可能にした。これよりセンサーチップの修飾からSPRに基づく簡便な分析法を明らかにした。
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