研究概要 |
まず,層状酸化物超薄膜合成法の検討を行った。目的層状酸化物前駆体としての金属超薄膜を電解メッキにより集電体上に析出させ,それを溶融炭酸塩中でin situ酸化することにより目的層状酸化物を合成する手法を試みた。この方法ではAu集電体上に結晶性が極度に発達したLiCoO_2超薄膜の合成が可能であったが,Mn系の酸化物ではLiMnO_2あるいはLiMn_2O_4のようにLi^+挿入脱離するものは得られず,Mnの平均価数は+2.6程度であった。また原子吸光による分析結果では酸化物中にはLiが含まれておらず,Mn_3O_4で酸化が停止したままであることがわかった。そこでMn系酸化物に関してはディップコーティング法を採用し,Pt集電体上にLiMn_2O_4超薄膜を作成することができた。これらの有機電解液中でのLi^+挿入脱離特性は優れており,固相内の電気化学反応としては1mV/sという高速な掃引速度でも可逆で美しい芸術的なサイクリックボルタッモグラムが得られた。10mV/sという掃引速度では可逆性に劣る歪んだ波形が得られた。可逆性を支配する因子として集電体酸化物超薄膜の異種接触界面,あるいは酸化物超薄膜電解液の接触界面が考えられる。粉体酸化物を用いたペレット電極による検討結果では,溶液抵抗によるiR降下が波形の歪みの原因ではなく,集電体酸化物超薄膜電解液の異種接触界面が重要な役割を演じていることが分かった。そこで,集電体金属としてAlを採用し,バリア型アルミ陽極酸化皮膜を生成させた上に酸化物/炭素のペレット電極を圧着し,その挙動を検討したところ,酸化物中に存在する欠陥ぶとその修復過程の制御がLi^+挿入脱離特性に重要な役割を演じており,炭素との異種接触界面ではこの欠陥部の修復が妨げられ,活性状態に維持されたままになることが分かった。その欠陥部の挙動をさらに掘り下げるため,光応答の測定を現在試みている。
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