研究概要 |
二酸化炭素を電解還元するとギ酸,CO,メタン,エチレン,アルコールなどの種々の物質が生成する。本研究は,このような比較的単純な小分子から多種の物質が生成する要因を明らかにするため,電極表面種の構造を赤外分光法にて調べることを目的としている。当初の予定ではギ酸とCOの2電子還元物質への生成物選択性について,非水系で調べる研究を計画した。その後,非水系では反応に電解質が関与することが示唆され,却って複雑な系であることが判明した。そこでメタン,エチレンの炭化水素系生成物への選択性と電極表面種の構造との関係に焦点を絞り直し,炭化水素への中間種COのCu電極への吸着状態について検討した。Cu電極は炭化水素の生成に高活性であり,(111)面ではメタンが,(100)面ではエチレンが主に生成する。 (111)と(100)の基本指数面,およびそれらのステップとテラスからなる一連のCu単結晶電極を作成し,COの吸着状態を調べた。その結果,(100)テラス面には2050cm^<-1>付近に吸収を有する。on-top型の吸着COが存在したのに対し,(111)テラス面では,水素発生を阻害するがCOの赤外吸収領域(2100〜1700cm^<-1>)に吸収を示さないCO吸着種が存在した。吸収帯が無い例として,金属面に平行に吸着しているCOなどが考えられる。(100)と(111)両ステップには共通して,(100)テラスよりやや高波数側の2070〜2080cm^<-1>付近に吸収を有する。on-top型の吸着COが存在した。このように面によって異なった吸着形態のCOの存在を示し,異なったCO吸着種が生成物選択性の大きな鍵となることを明らかにした。
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