2種類以上の金属を含む複合酸化物は、超伝導体、燃料電池の電極材料、化学センサの材料などとして注目されており、新規な均質微粒子の作成法が求められている。報告者らは、多核複金属錯体を合成して出発原料とし、これを低温で熱分解することにより複合酸化物を合成する新しい方法について検討を行なった。主に希土類Lnと遷移金属Mから成るペロブスカイト型酸化物を作製した。LaMn-有機多核錯体の600℃低温熱分解により、直径が約20nmの均質微粒子が得られた。特にLa[Fe(CN)_6]・nH_2Oの低温における熱分解挙動が検討され、350℃の低温でも長時間焼成すれば、LaFeO_3の微粒子が得られた。同じように他の希土類元素Lnと遷移金属Mの組み合わせで、La_<1-x>Sm_xFeO_3、NdFe_<0.5>Co_<0.5>O_3、YBa_2Cu_3O_7などの様々な3成分複合酸化物の均質微粒子が合成され、その結晶のキャラクタリゼーションがなされた。さらに、この方法で、LaFeO_3やSmFeO_3を合成しNO_2ガスセンサへ応用したところ、一般的に用いられる固相反応法により得たものよりもかなり優れたセンサ材料になりうることが明かになり、さらに表面分析を行なったところ、多核錯体法で作製した方が、吸着サイトの数が多く、均質性が優れていた。また、焼成雰囲気によりガス吸着サイトとの数が制御できることが明らかになった。一方、LaCu-有機錯体では、La_2CuO_4-CuO複合酸化物となるが、これに10ppmH_2Sガスを通じたところ、2桁以上の伝導度変化がみられた。この材料の表面構造がどのようにH_2Sにより変かするかがXPSにより検討された。
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