遷移金属及び希土類元素の各種ポリピラゾリルボラト錯体を合成し、その構造と性質、化学反応性、機能性錯体材料への応用等を検討してきた。本研究では、種々の(置換ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)及びその関連錯体を合成し、塩素ガスの可逆的取り込みとそれに基づく固体型塩素ガスセンサーの開発をめざす。 (1)ビス(ポリピラゾリルボラト)ニッケル(II)錯体への臭素親電子置換の反応生成物の同定 ビス(ポリピラゾリルボラト)ニッケル(II)錯体の臭素処理により、ピラゾリル環4-位への親電子型臭素置換がおきたことを、またあらかじめ4-位に臭素置換した(ポリピラゾリルボラト)ニッケル(II)錯体の場合には親電子置換反応がまったくおきなかったことを、高感度の質量分析スペクトル測定で明確に確認した。 (2)各種(ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)錯体の合成と性質 各種置換基を導入したビス(置換ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)錯体を合成した。例えば、4-位に臭素原子とかメチル基で置換したトリスおよびテトラキス(1-ピラゾリル)ボラトの一群の誘導錯体を合成し、その単結晶X線構造解析による錯体構造の特徴付け、合成ルテニウム錯体のCV測定による各ポリピラゾリルボラト配位子の電子的な性格付け、ハロゲン溶媒中でのビス(置換ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)錯体の電荷移動錯体種の生成と光電子移動等を検討した。 (3)ビス(置換ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)錯体と塩素ガスの反応 4-メチル基などで置換したビス(ポリピラゾリルボラト)ルテニウム(II)錯体の粉末試料に対し、塩素ガスの可逆的取り込み、粉末拡散反射スペクトルによる色調変化を測定し、固体型塩素ガスセンサーへの展開の可能性を明らかにした。
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