研究概要 |
平成10年度の研究実施により以下の成果を得た. 1. 本研究の目的である精密濾過用高性能フィルターメンブレン作製の基礎となる陽極酸化ポーラスアルミナの自己組織化条件に関して探索を進め,今年度新たにリン酸を電解液として用いることにより,従来知られている構造に比較し,より大きな細孔間隔で細孔が自己組織化的に理想配列をとる条件が見出された.今回,見出された条件では,200Vの定電圧条件下で陽極酸化を行なうことにより,間隔500nmで細孔が理想配列したポーラスメンブレンが得られる.本結果は,ポーラスメンブレンの規則化範囲を拡大をはかる上で重要であるとともに,自己組織化の機構を検討する上でも有用な知見である. 2. 陽極酸化アルミナ皮膜の濾過フィルターメンブレンへの応用に必須なスルホール化技術に関して検討を行ない,機械研磨手法により皮膜底部の閉塞部分の除去が可能なことが確認された.この手法によれば,従来の湿式法によるエッチングに比較し,細孔の拡大を伴なうことなくメンブレンのスルーホール化が可能となる. 3. ポーラアスメンブレンの適用範囲拡大を目的に,陽極酸化ポーラスアルミナを鋳型とする転写プロセスについて検討を進めた.本年度は,ポーラスアルミナを母型とし,電鋳技術にもとづき金属ポーラスメンブレンを作製するプロセスを中心に検討を行なった.本年度新たに導入したクリーンベンチを用い転写を実施することにより,ピンホール発生を低減した転写が可能になることが確認された. 4. 作製されたフィルターメンブレンの精密濾過特性の評価を行なうためのモデル粒子系として,単分散ポリマー微粒子を導入し,フィルター上での補足状況の評価・観察手段について検討を加えた.
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