研究代表者らは、これまでにPd薄板電極などを用いて不飽和有機化合物の水素化反応システムを構築することに成功し、このシステムを用いてときの水素化反応速度が原子状水素生成の電流値に依存することを見出した。本研究では、動力学的解析からこの理由を明らかにするとともに、反応選択性を制御することの可能性を調べることを目的とする。本年度の研究により得られた知見を総括すると以下のようになる。 1. Pd薄板の水素化反応側にPd黒を修飾した電極を用いて、アセチレンやジフェニルアセチレンなどのアルキン水素化反応を行ったところ、原子状水素生成の電流値が増大するにつれてエタンやビベンジルなどのアルカンの選択率が増大し、電流値が減少するにつれてエチレンやスチルベンなどのアルケンの選択率が増大した。この結果から、原子状水素生成の電流値を制御することにより反応選択性の制御できることが明らかになった。 2. Pd薄板の水素化反応側にPd黒を修飾し、裏側を原子状水素の酸化電位に保つことにより、ギ酸の脱水素反応システムを構築できることがわかった。その際、Pd黒の析出量が増大するにつれてギ酸素の脱水素反応速度が速くなることがわかった。また、透過した原子状水素の酸化電流の経時変化をコンピューターシュミレーションすることにより、Pd薄板内の水素拡散係数を決定することができ、既存値にほぼ一致することが明らかになった。
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