研究概要 |
研究代表者らは、Pd薄板電極などを用いた新しい水素化反応システムにおいて、水素化反応速度が原子状水素生成の電流値に依存することを以前に見出した。本研究では、昨年度に引き続き反応選択性を制御することの可能性を調べることを目的とする。本年度の研究で得られた知見を総括すると以下のようになる。 1.Pd/Pd黒薄板電極を用いて、分子内にC=C結合とC=O結合をもつα,β-不飽和アルデヒドのひとつであるクロトンアルデヒドの水素化反応を行ったところ、C=C結合だけが水素化され、ブチルアルデヒドの生成することがわかった。さらに、Pt、Ni、Ruなどの異種金属をPd/Pd黒電極上に担持したところ、C=O二重結合が水素化されたクロチルアルコールや両不飽和結合が水素化された1-ブタノールも一部生成することがわかった。 2.クロチルアルコールの水素化反応において、水素化生成物である1-ブタノールと異性化生成物であるブチルアルデヒドが生成した.これらの生成比は、原子状水素生成の電流値あるいはクロチルアルコールの初期濃度に大きく依存することが明らかになった。 3.Pd/Pd黒薄板電極を用いてN_2Oの還元反応を行ったところ、N_2だけが生成することがわかった。また、硝酸の還元反応において、Pd/Pd黒薄板上にCuを担持した場合には、NO_2-やN_2が選択的に生成し、Niを担持した場合には、NH_3が選択的に生成することが明らかになった。
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