研究概要 |
3-メチルシドノン(3-MSD)及び3-エチルシドノン(3-ESD)と種々エーテル,エステル系溶媒との二成分混合溶媒電解液の充放電特性をLiサイクル効率から検討したところ,その効率はいずれの系においても50%以下となり,既に報告した3-プロピルシドノン,3-イソプロピルシドノン系と比較して非常に低い値を示した。したがって,これら二成分混合系はLi二次電池用溶媒として実用性に乏しいことがわかった。そこで,新たに3-MSD,3-ESDを含む三成分混合溶媒電解液の電気化学特性について検討を試みた。 エチレンカーボネート(EC)をベースとするジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)等モル混合溶媒に3-MSD,3-ESDを添加したときの1mol dm^<-3>の種々電解質(LiClO_4,LiPF_6,LiN(C_2F_5SO_2)_2)を含む電解液の比導電率は3-MSD,3-ESDの添加量の増加により徐々に増大したが、LiBF_4を含む系では比導電率の変化はほとんど観測されなかった。また電解質の違いによる比導電率の大きさは溶媒の組成によらずLiPF_6>LiClO_4>LiN(C_2H_5SO_2)_2>LiBF_4の順となった。一方,Li/V_2O_5のプロトタイプ電池の正極当りの重量エネルギー密度とこれら比導電率との間には必らずしも相関が認められなかった。 LiClO_4及びLiBF_4を含む二成分等モル混合溶媒への3-MSD,3-ESDの添加はLiサイクル効率の向上に有効であることがわかった。この原因を走査型顕微鏡(SEM)によりLiサイクル効率測定後の電極表面を観察したところ、LiClO_4及びLiBF_4を含む混合電解液では電極表面に粒状の析出物が生成し,かつ表面形態が均一であることがわかった。このことがLiサイクル効率の向上,いわゆるスムーズなLi極の析出・溶解過程に寄与していると考えられる。
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