研究概要 |
現在、リチウム電池の正極活物質には、LiCoO_2、LiNi_xCo_<1-x>O_2が用いられているが、その原料となるコバルトは、地球での埋蔵量が少なく、マンガンなどの化合物に変えることが望まれる。そこで、リチウムと組み合わせ、約4V程度の起動を示す正極活物質としてのスピネル型LiMn_2O_4を実用化するための研究を行った。硝酸リチウムと二酸化マンガンの混合物の熱処理により合成したLi_xMn_2O_4は、xの値がx>1となると、ヤンテラー効果により、立方晶から正方晶に変化し、電位もリチウム負極と組み合わせ、約3Vに低下するので、0.1<x<1の範囲での使用に限られ、容量密度は0.13Ahg^<-1>と小さくなった。一方、xの値がx<0.5となると、結晶の崩壊を伴いながら、別の立方晶が生成し、0.1<x<1の範囲で充放電を繰り返すと、容量が徐々に低下した。xの値が0.5<x<1の範囲で充放電を繰り返した場合のみ容量の変化は認められなかったが、容量密度は.0.07Ahg^<-1>と非常に小さくなった。 そこで、LixMn_2O_4のxの値がx<0.5の範囲で、結晶が崩壊しないように、結晶のMnの位置を他の原子、Co、Niで置き換えたLi_xMn_<2-y>CoyO_4、LixMn_<2-y>Ni,O_4を合成し、X線回折により、充放電の繰り返しによる活物質の構造変化を調べると同時に、リチウムと組み合わせた電池を組み立て、充放電を繰り返した時の電位変化を測定した。Coを添加したときは、y=0.3程度まで、Niを添加したときは、y=0.2程度まで、結晶格子を変えずにそれら原子をMn位置に置換できた。活物質の容量は、Co、Niの添加により減少したが、y=0.2の場合、0.3<x<1の範囲で充放電を繰り返しても容量の変化は殆ど認められず、活物質の崩壊は認められなかった。 次に、Mn位置の一部をリチウムで置換したLi_<4/3>Mn_<5/3>.O_4を合成した。Mnがすべそ+4価のスピネル超格子構造の化合物で、リチウムと組み合わせ、3Vの起電力しか示さなかったが、平坦な充放電曲線を示し、容量密度0.20Ahg^<-1>と非常に大きい値を示した。しかし、充放電の繰り返しにより、容量が徐々に低下した。超格子構造の崩壊が容量低下の原因であることを明らかにし、それを防ぐにはwn位置をTiで置換するのが効果的であった。
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