研究概要 |
本研究はTeO_2系およびBi_2O_3系ガラスに焦点を当て、ガラス転移域での粘性灘定、示差走査熱量計(DSC)による比熱測定などを行い、これらの光機能性を示す低フォノン酸化物ガラスの構造緩和機構を明らかにすることを目的とする。得られた成果は次の通りである。1)10K_2O-10MO-80TeO_2ガラス(M=Mg,Sr,Ba,Zn)を作製し結晶化に対する熱的安定性を評価したところ、熱的安定性はZn>Mg>Ba>Srの順に向上し、特にZnOを含む3成分系ガラスは極めて安定であることがわかった。2)様々な熱履歴を与えたxK_2O-(20-x)MgO-80TeO_2ガラスのガラス転移域での比熱変化量ΔCpが45J/molKという大きな値を示すことから、ガラス転移域で網目構造の切断が容易に起こることが明らかになった。比熱の温度依存性から見積もられた構造緩和の活性化エネルギーは900〜1200kJ/molであり、K_2OをMgOで置換するにつれ小さくなった。このことから、TeO_2系ガラスのフラジリテイーはアルカリ金属とアルカリ土類金属イオンの混合により低下することが明らかになった。3)ラマン散乱スペクトルからK_2OとMgOの混合によりガラス骨格構造の乱れが減少することが明らかになり、骨格構造の乱れと構造緩和の活性化エネルギーが密接に関連していることが示唆された。4)Bi_2O_3系ガラスとしてxBi_2O_3 -(95-x)B_2O_3-5PbOガラス(x=30〜70)を検討した。これらのガラスは結晶化に対して熱的にかなり安定であり、屈折率も2.3という高い値が得られた。5)ガラス転移域での粘性流動の活性化エネルギーは627〜745kJ/molであり、Bi_2O_3の増加と共に減少した。フラジリテイの値は50〜57であり、特にBi_2O_3含有量40mol%において最小値を示した。これらの値はTeO_2系ガラスと比べて若干大きい値であり、Bi-O結合もTeO_2系ガラスと同様にガラス転移域で容易に切断されていることが明らかになった。
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