研究概要 |
オルトリン酸塩は,興味深い光物性や電気物性をもち,生体材料としても知られている。そのオルトリン酸塩単結晶のフラックス育成を試みた。溶質とフラックスの混合物を1100℃まで加熱した高温溶液を5℃/hの速度で徐冷した。得られた単結晶を検討した。以下の結果を得た。 1. オルトリン酸ストロンチウムカリウム[KSrPO_4]単結晶育成用のフラックスとしてモリブデン酸カリウムが有効であることがわかった。生成した単結晶(最大3.6mm)は,角柱状の自形が発達していた。 2. オルトリン酸ストロンチウムナトリウム[NaSrPO_4]単結晶育成用のフラックスとして塩化ナトリウムが有効であることがわかった。生成した単結晶(最大1.2mm)は,六角薄板状であった。溶質濃度が低い場合には,オルトリン酸塩の一種であるストロンチウム塩素アパタイト[Sr_5Cl(PO_4)_3)]単結晶が生成した。 3. オルトリン酸鉛ナトリウムリチウム[(Li,Na)PbPO_4]固溶体単結晶を育成する実験では,オルトリン酸鉛ナトリウム[NaPb_4(PO_4)_3]単結晶(最大0.3mm)が生成した。この結晶は,構造解析によると,アパタイト型構造に属していた。3.の結果は,Mater.Rcs.Bull.誌に投稿中である。 4. 2.で得られた結果を参考にして,ストロンチウム塩素アパタイト[Sr_5Cl(PO_4)_3)]単結晶を塩化ナトリウムフラックスから育成した。生成した単結晶(最大8mm)は,六角柱状であった。 5. バリウム塩素アパタイト[Ba_5Cl(PO_4)_3)]単結晶を塩化ナトリウムフラックスから育成した。生成した単結晶(最大12mm)は,六角柱状であった。単結晶の大きさは,溶質濃度に依存した。
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