研究概要 |
リチウムイオン2次電池の電解液としてプロピレンカーボネートは電位窓が広く、正極との親和性が良いなどの利点があるが、黒鉛系炭素材料負極と組み合わせた場合、黒鉛層間内でプロピレンカーボーネートの分解が生ずるために、使用できない。この問題を解決する方法として、プロピレンカーボネートに1,2-ジエトキシエタンのようなエーテル系溶媒を加えることによってプロピレンカーボネートの分解を押さえる方法を考案し、高性能リチウムイオン2次電池を得るべく研究を進めた。この研究において、1,2-ジエトキシエタンを混合したプロピレンカーボネートを電解液とし、これに電解質として過塩素酸リチウムを加え、高配向性熱分解黒鉛を負極に使用して、そのボルタングラムを測定した。また、この研究では、1,2-ジエトキシカーボネートの作用に明確にすべく、1,2-ジエトキシブタンと2-メチルテトラヒドロフランの混合物についても調べた。その結果、溶媒の分解に起因する大きな還元ピークが、充放電の第1サイクルから生じ、サイクル数を増すごとに分解が継続することが明瞭に認められた。これに対して、1,2-ジエトキシエタンを混合した電解液ではプロピレンカーボネートの分解に伴うピークは何サイクル繰り返しても認められず、その添加効果が明らかとなった。これらの結果を解析した結果、1、2-ジエチルエーテルは、リチウムと溶媒が黒鉛層間に共侵入した3元系黒鉛層間化合物を生成し、これが黒鉛表面上に安定な含リチウム表面被膜を形成し、リチウムの侵入・離脱反応を容易にしていると推定された。
|