研究概要 |
(1)溶媒法によるアルカリ金属-黒鉛層間化合物の合成が研究された。以前の研究では、溶媒としてテトラヒドロフラン系の環状エーテルやジメトキシエタンのような直鎖状エーテルが使用されてきたが、今回の研究ではエーテル結合を持たないトルエンやキシレンなど芳香属系溶媒が試された。合成法は、エーテル系の場合と同じく、溶媒にナフタレンを加えてアルカリ金属(Li,Ns,K,RbおよびCs)を溶解した溶液中に黒鉛を浸漬する方法である。その結果、LiとNaは溶媒に溶解しないために生成は全く認められなかったが、その他のものではアルカリ金属-黒鉛層間化合物が得られた。ただ、トルエン中でのKおよびo-キシレン中でのKおよびRbでは、溶媒も共侵入した3元系黒鉛層間化合物であった。また、生成速度は、2元系、3元系とも非常に遅く、3ケ月間放置しても完全な第1ステージ化合物は得られなかった。 (2)電位窓が広く、正極との親和性のよいプロピレンカーボネートをリチウムイオン電池に用いるための方法を研究した。従来の研究で、この溶媒は黒鉛層間で分解するため使用できなかった。しかし本研究において、溶媒に共侵入可能なジエチルエーテルなどのエーテル類を加えると、使用可能になることが分かった。これは最初にジエチルエーテルなどが黒鉛層間に取り込まれたのち脱離したときに安定な表面被膜を生成するためと推定された。
|