本研究では、CaMnO_3あるいはMnの代わりにFeを含む酸化物に注目して新しい電子伝導性複合酸化物の合成を試みると共に、これらを活物質とした電池放電特性について検討した。 まず、Ca_<1-x>Ln_xMnO_<3-δ>(x=0.1)で示される多孔質セラミックスの導電率は、空気中、室温付近で10^1Scm^<-1>以上の比較的高い値を示した。KOH水溶液中で放電を開始すると、初期に著しい電位降下を生じるが、比較的良好な電位平担性を示し、グラファイトなどの導電剤を添加することなしで電池活物質として機能した。この場合の放電は、Mnの価数変化によるものと考えられた。しかし、Caサイトの一部をLa^<3+>で置換したときが、最も放電容量が大きかった。これは試料中の酸素量は置換金属種に依存することを示すものであった。放電容量と効率上げるため、原料のボールミリングだけで導電性試料固溶体が得られないか検討したが、ミリングだけでは調製できないことが分かった。 次に、CaFeO_3系およびSrFeO_3系試料の調整を試みた。前者の場合、ブラウンミラライト型のもの(Ca_2Fe_2O_5)が得られ、KOH水溶液中での放電は、全く平坦部を示さなかった。これに対し後者の場合確かにペロブスカイト型酸化物の調整は可能であり、また単位重量あたり放電容量は、上記のものに比べてかなり小さいものの、二次電池用の活物質として作動することが分かった。 更にCa_<0.9>La_<0.1>MnO_<3-δ>の中性水溶液中での放電性能を調べた。この場合、アルカリ溶液中での放電に比べれば多少容量が減少するものの、リチウムイオンを含む溶液中ではほぼアルカリ溶液中での放電に匹敵する結果が得られた。これは、この材料の海水電池への応用の可能性を示すものであった。
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