研究概要 |
昨年度に引き続き,噴霧熱分解法を用いて特異な微構造を持つ酸化物微粒子および酸化物-金属複合微粒子を合成し,その微構造に合成条件がどのように影響するかを明らかにするための研究を行った.昨年度から研究している噴霧された原料溶液の液滴内部で起こる化学反応や複数の成分の析出しやすさの違いを利用する手法に加えて,スラリーを原料として得られる微粒子の形状や内部組織,組成分布などを制御する手法について検討した. 酸化亜鉛-金属複合微粒子を合成する実験では,酸化亜鉛のアンモニア水溶液に沈殿剤としての炭酸水素アンモニウムと酸化銀または硝酸パラジウムを加えた溶液を原料として,中空球形の酸化亜鉛微粒子の表面にナノサイズの銀またはパラジウム微粒子が均一に分散付着した複合微粒子を合成することができた.このとき,炭酸水素アンモニウムの濃度を大きくすることで複合粒子の粒径を大きくするとともに金属微粒子のサイズを小さくできること,微量の硝酸アンモニウムの添加がその逆の効果を示すこと,などが明らかになった. スラリーを原料に用いる系については,主に多孔質酸化チタン粒子の合成を試みた.スラリーに増粘剤としてのPVAと発泡剤としての炭酸水素アンモニウムを加えて合成した微粒子は,酸化銅や酸化亜鉛粒子のような泡状や中空状といった特異な微構造は示さなかったが,微細孔をもつ多孔質粒子となった.この粒子の細孔構造は添加物濃度や熱分解温度などの合成条件によって制御することが可能であり,気体吸着活性の高い光触媒材料としての応用について検討を進めている.
|