研究概要 |
1) α-フルオロビニルホスホニウム塩の合成 標的化合物の前駆体としてα-フルオロビニルジフェニホスフィンを選び合成を検討した。ジフェニルホスフィドアニオン(クロロジフェニルホスフィンと金属リチウムから合成)と入手容易な1,1-ジフルオロエチレンを-60℃〜-40℃で反応させることで、望むホスフィンを82%収率で得た。対応するホスホニウム塩の合成はアルキル系およびアリール系の2種類の化合物を用いる4級化による方法を検討した。ヨードメタンとの反応は容易に進み対応するα-フルオロビニルジフェニルメチルホスホニウム塩を91%の収率で与えた。アリール化合物との反応は困難であった。反応条件を種々検討した結果、ジフェニルヨードニウム塩と塩化銅(I)の存在下、140℃で反応させることで対応するα-フルオロビニルトリフェニルホスホニウム塩が82%収率で得られることがわかった。このようにしてわずか二段階で目的とした含フッ素ビルディングブロックの合成に成功した。 2) α-フルオロビニルトリフェニルホスホニウム塩の反応 基本的反応性をみる目的でフルオロエチレン基を有するエーテルの合成を検討した。求核剤のナトリウムエトキシドをマイケル付加させて得られるイリドに種々のアルビデド類をWittig反応させたところ、期待した反応が進行し目的化合物のモノフルオロビニルを有する種々のエーテルを高収率で得ることができた。この結果からα-フルオロビニルトリフェニルホスホニウム塩は有機化合物中に容易にフルオロエチレン基を導入できる有用な化合物であることが明らかとなった。現在、フルオロエチレン基を有する複素化合物合成に着手し、適用範囲の拡大を行なっている。
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