研究概要 |
平成10年度には下記の点を明らかにした。 (1) 5種類のジアルコキシビナフトール類を合成し、増感剤として備えるべき諸物性について検討した。その結果、メチレンジオキシ基の様な環状構造をとるジアルコキシビナフトール類が増感剤に適していることなどを明らかにした。 (2) ジアルコキシピナフトール類を増感剤として用いて、1,2-ジアリールシクロプロパン類の光アミノ化反応について検討した。その結果、レドックス光増感反応でアミノ化反応が進行した。同様の反応をジアルコキシビナフトール類の光学活性体を用いて検討したが、不斉反応は進行しなかった。 (3) ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン類の光アミノ化反応と環化反応を組み合わせて、ジベンゾ[a,d]シクロへプテンイミンの合成研究を行った。生成したジベンゾ[a,d]シクロヘプテンイミンの(+)-体および(-)-体をキラルカラムで分離し、その分子円二色度などを求めた。この基質は次年度に計画している絶対不斉合成の研究に用いる。 (4) 水中シクロデキストリン存在下でp-メトキシベンジリデン酒石酸エステルの(+)-体および(-)-体の蛍光スペクトルを測定した。その結果、シクロデキストリンの濃度が高まるに従って、蛍光強度が増加することを見い出した。また、その増加の割合が(+)-体と(-)-体では異なることを見い出した。これは今までに報告の少ない励起状態での不斉認識であると思われ、平成11年度も引き続き研究を行う。
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