研究概要 |
液晶およびLB膜の研究の過程でピラジン誘導体は、置換基によっては強い蛍光を示すことを見いだした。ピラジンは複素芳香環であるため強固な骨格であり、安定かつ高輝度の蛍光物質の開発を目的として本研究を開始した。 まず、ピラジン環の2-および5-位に同じアリール基を導入したピラジンの合成を行った。アリール基を置換フェニル基としたとき、p-メチルフェニル、フェニルおよびp-ブロモフェニル基置換体に比べ共鳴能大きいp-メトキシフェニル基が強い蛍光を示した。また、大きいπ電子系を持つ1-および2-ナフチル基を導入した場合はいずれも強い蛍光を示したが、平面構造が可能な2-ナフチル基の場合により強い蛍光発光が見られた。これらの知見をもとに、大きいπ電子系と大きい電子供与性を併せ持つベンゾフランを導入した場合、蛍光波長は長波長にシフトするが、2,5-位に同じアリール基持つものの中で最も強い蛍光が見られた。 蛍光波長と蛍光強度に対する置換基の効果をさらに明確なものとするため、2,5-位に異なった置換基のを持つ非対称置換ピラジンの合成を計画し、最初に、二種のアミノメチルアリールケトン塩酸塩の熱反応を試みた。非対称ピラジンの収率は悪いものであったが、一方に、5-メチルフラン-2-イル基あるいはp-メチルフェニル基とし、他方に種々の置換基を導入した非対称置換ピラジンの合成することができた。一方を5-メチルフラン-2-イル基としもう一方を2-ナフチル基とした場合、これまで合成したピラジン誘導体の中で最も強い蛍光を示し、蛍光発光波長の大きい長波長シフトは見られなかった。 非対称置換ピラジンの合成については、アミノメチルアリールケトン塩酸塩とアジリンの反応により収率の向上を達成することができた。 本研究の結果は、今後、対称、非対称置換とすることにより様々な波長で蛍光を示すピラジン誘導体の合成とその応用に新たな指針を与えるものと考えられる。
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