研究概要 |
この研究課題では以下の2つのことを明らかにした。 (1) 10,11-Dihydro-leukotrieneB_4(以下,dihydro-LTB_4)の合成 γ位にシリルオキシ基を有するシスブロミドが光学活性体として容易に入手できることから,これに注目した。しかし,シリルオキシ基がかさ高く,かつ臭素原子が脱離基として中程度の反応性しか示さないことから従来のカップリング反応剤は使えず,有機合成に活用された例は少なかった。しかし,ホウ素反応剤を使うと収率よくdihydro-LTB_4のシス-トランス共役ジエン構造を合成できた。さらに,この反応を利用して類似のdihydro-LTB_4体(10,11-dihydro-LTB_4amide,10,11-dihydro-LTB_3,10,11一dihydro-12-oxo-LTB_4)も合成できた。合成したdihydro-LTB_4は共役トリエン構造をもつLTB_4そのものよりも化学的安定性に優れており,生化学的研究に役立つものと考えられる。 (2) キラルなホウ素反応剤を用いる基質の立体制御 σ面対称をもつπ-アリルニッケルを生じるシクロヘキセニルアセテートとオルト位にキラル中心のあるアリールボレートとの反応を行ったところ,そのキラル中心によりπ-アリル部位の反応位置が高度に選択(ds>90%)されることを見いだした。
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