研究概要 |
最近,カルボニル基を含む反応剤がいくつか開発されている。しかし,アリルカップリング反応に適した試薬の開発は遅れていた。我々は,カルボニル基を含むアルケニルあるいはアリールホウ酸の2,3-ブタンジオールエステルにMeZnClを作用させるとMe基がホウ素原子と選択的に反応し,有機ホウ素反応剤が調製できることを見出した。こうして調製した有機ホウ素反応剤はニッケル触媒存在下,種々の第二級アリルエステルと反応しカップリング生成物を高収率で与えた。 つぎに,海洋グラム陰性菌に対してのみ選択的かつ強力な抗菌活性を示すkorormicinの立体化学を合成により決定する研究を行った。まず,korormicinをラクトン部分,アミド部分,エボキ基を含む有機ホウ素反応剤部分に分けて考えた。そして,可能な4つのdiastereomerを合成するため,ラクトン部分はS体を,その他のフラグメントは両エナンチオマーを光学純度高く合成した。ラクトン部分とアミド部分を縮合し,生じた2種類の中間体を有機ホウ素反応剤キーステップとする方法で縮合するとkorormicinが合成できた。こうして合成した4つのジアステレオマーの旋光度を測定したところ,(5S,3'R,9'S,10'R)-体が天然のものと一致した。 また,delta7-PG A1メチルエステルの合成にも成功した。この合成の際,エノンのα dash位でのアルドール反応について合成上有用な知見が得られた。
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