研究概要 |
本研究では,今まで研究対象から外されていた立体障害の大きな基質に対して高反応性有機ホウ素反応剤を適応し,その選択性や反応性を検討した。 (1)8-acetoxy-octalone-D^<1(9)>-2とフェニルホウ素反応剤とのアリール化は60℃で進行し,目的化合物[8-phenyloctalone-D^<1(9)>-2]が選択的(β-Ph:α-Ph=>93:7)に生成した。この選択性は出発物質のacetoxy基の立体化学には影響されず,従来の知見に基づく予測とは異なっていた。この反応を用いて,p-MeC_6H_4,p-MeOC_6H_4,p-PhC_6H_4,p-(NMe_2)C_6H_4も導入できた。 (2)σ面対称をもつπ-アリルニッケルを生じるシクロヘキセニルアセテートとオルト位にキラル中心のあるアリールホウ素反応剤との反応では,そのキラル中心によってπ-アリル部位の反応位置が効率よく不斉誘導(>90%ds)されることを初めて見いだした。 (3)γ位にシリルオキシ基を有するシスブロミドとアルケニル基とのカップリング反応をホウ素反応剤を用いて行ったところ,シスートランス共役ジエンが収率よく合成できた。この反応を活用して10,11-dihydro-LTB_4やこれに類似した天然物が合成できた。 (4)海洋グラム陰性菌に対して抗菌活性を示すkorormicinの立体化学を全合成により決定するため,可能な4つのdiastereomerを有機ホウ素反応剤とのカップリング反応を用いて合成した。そして,それぞれのジアステレオマーの旋光度を測定したところ,(5S,3′R,9′S,10′R)-体が天然のものと一致した。 (5)Δ^7-PGA_1メチルエステルの合成にも成功した。この合成の際,エノンのα dash位でのアルドール反応について合成上有用な知見が得られた。
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