研究概要 |
つぎの二つの目標を設定し研究を行った.1)キノンとジアゾアルカンの1,3-双極子付加環化反応により、合成ブロックであるシクロプロパン環を縮環したホモキノン化合物を合成し、電子供与体であるナフタレンやトリエチルアミンなどの芳香族化合物やアミン等からの光誘起電子移動を鍵過程とする新しい合成プロセスの開発.2)キノン骨格にクラウンエーテルを接合したキノン・クラウンエーテルを合成し、カチオンに対する選択的包摂能を利用した反応の制御. 目標1では、生成する反応中間体(ラジカルイオン)の高い反応性により、通常の熱反応では起こり得ないシクロプロパン環の結合開裂反応、ホモキノンの骨格変換反応、水素引き抜きによるラジカルペアーの形成とラジカル再結合による高次環状化合物の生成などの各反応が起こることを明らかにした.今後、これらの新規な合成経路の展望と限界を知るため、ホモキノン化合物の置換基、反応溶媒、電子供与体等の反応支配因子の最適化ならびに反応機構の解明を行う. 目標2では、キノン骨格のC=C二重結合の反応を取り上げた.キノンのディールス・アルダー反応および1,3双極子付加反応の反応性を制御するためクラウンエーテル環をキノン骨格に縮環させた機能性キノン化合物を合成した.この化合物とシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応を種々の金属イオン存在下行い、反応速度を測定した結果、クラウン環の選択的カチオン取り込みに依存する加速効果が認められた.この現象はクラウンエーテルのカチオン包摂能を利用した新しい反応制御で、カチオンサイズを変えることによって反応を微妙にコントロールすることが可能である.この系についても今後発展させる予定である.
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