研究概要 |
本研究課題としてつぎの3つのテーマについて結果をまとめる。 1.キノンとドナーオレフィンの光誘起電子移動反応によるカップリング反応 電子移動反応により生成したセミキノンラジカルとオレフィンのラジカルカチオンはプロトン移動によりフェノキシラジカルとオレフィンのアリルラジカルになる。このラジカル対はカップリングすることにより1°,2°,あるいは3°のヒドロキノンビニルエーテルとなる。この生成物分布がキノンおよびオレフィンの置換基の立体的かさ高さに大きく影響されることを見いだした。 2.ホモキノンとアルキンの[2+2]光環化生成物のルイス酸触媒分解反応 3環性光環化物はルイス酸により常温でシクロブテン環の開裂を伴う多段階骨格転位反応により4環性のかご状化合物を与えた。用いるルイス酸の強さによりこのタンデム型転位反応を途中段階で停止させることが可能で、種々の環骨格を形成できることが明らかとなった。 3.ピリドノクラウンエーテルのカチオン認識互変異性に基づく反応制御 ピリドノクラウンエーテルはクラウン部位の金属カチオン認識によりピリドン型からフェノール型に互変異性化する。したがって、金属カチオンとの選択的錯体形成によりフェノール部位のOH基の酸性度をコントロールすることが期待できる。具体的な反応として、ジフェニルジアゾメタンの酸触媒分解(メタノール中)に適用したところ、15員環のクラウンエーテルではMg^<2+>>Ca^<2+>>Sr^<2+>>Ba^<2+>の順に反応が加速されたが、18員環では逆の加速効果が見られイオン半径と環サイズの適合する組み合わせにおいてピリドノクラウンエーテルの酸性度が大きくなり反応が速くなることが明らかとなった。
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