研究概要 |
1.パーアルキルやパーアリールジホスフィン配位子を有する、イリジウム(I)錯体を合成した。特に、[IrCl(binap)]_2の構造をX-線構造解析で明らかとなった。同様に、今回合成したイリジウム(I)錯体塩素架橋型中性2核イリジウム(I)錯体である。さらに、パーアリールジホスフィン配位子有する[IrCl(binap)]_2は容易にメタノール、水、カルボン酸やチオールなどプロトン性分子を活性化し、定量的に塩素架橋を持つ、イオン性二核イリジウム三価錯体[{Ir(binap)(H)}_2(μ-ER)_2(μ-Cl)]Cl(ER=OMe,OH,OCOMe,SPh,etc)となることをX-線構造解析的及びスペクトル的研究で構造を明らかにしてきた。さらに、ポリファンクショナルプロトン性分子をも活性化させることを見出した。 2.イオン性ヒドリド(メトキソ)二核イリジウム三価錯体は、メタノールを水素源とするアルキン化合物の優れた水素移動型還元反応の触媒前駆体として機能する。アルキン化合物はシス-オレフィンを経てトランス-オレフィンとなり、最終的にアルカンまで還元される。とりわけ、メタノールを水素源とする水素移動型還元反応は珍しい反応例である。 3.イオン性ヒドリド(ヒドロキソ)二核イリジウム三価錯体によるニトリルの水和反応の最適化については現在引き続いて検討している。 4.反応活性な中性2核イリジウム(I)錯体はPPh_3,PCy_3やP(OPh)_3など中性配位子と反応し、単核イリジウム(I)錯体或いはOPhの芳香族環が酸化的付加したヒドリド(III)錯体が生成することを見出した。さらに、初歩的結果であるが、単核イリジウム(I)錯体はプロキラルイミンの不斉水素化の良好な触媒となり、今後の展開が期待できる。
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