研究概要 |
パラジウム触媒によるπ-アリルパラジウム中間体への分子内アルケン部分の挿入-環化反応を背景に,分子内の1,2-ジエン部位の挿入-環化とカルボニル化を伴う触媒反応の可能性およびこの環化における位置あるいは立体化学制御を見出すことができた.すなわち,酢酸アリル型エステルの基質とパラジウム(0)触媒から生ずるπ-アリルパラジウム中間体へのアレン挿入を契機とする環化反応を一酸化炭素雰囲気下で行えば,他の手段では起こり得ない複数の炭素-炭素結合形成が位置および立体選択的に起こることを明らかにし,官能基化された5員縮合環のユニークな合成法となることを明らかにした. 最新の成果では,一酸化炭素雰囲気下で,パラジウム触媒による5-アルケニル-1,6,7-オクタトリエニル系エステル類,5-(3-butenyl)-5-methyl-1,6,7-octatrien-3-yl acetateおよび5,8-dimethy1-5-(1,2-propadienyl)-2,8-nonadienyl acetate,の連続的な(Domino型)環化-カルボニル化を実現し,いずれの場合も5員環形成だけを伴う4環性化合物を満足すべき収率で得た.これは炭素.炭素結合形成を4回,カルボニル挿入を2回の反応が玉突き的に起こったことを示し,かつ,後者の場合各段階の収率が94%を越えている結果といえる.触媒反応操作1回で6ヶの炭素-炭素結合形成を実現している点で意義深い成果である.これらの事実に基づいて,capenellene系誘導体の合成にむけて研究を続ける.
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