研究概要 |
鎮咳,去啖作用が大きい漢方薬″Pai-ch′en″として中国で広く使用されている,ガカイモ科の植物に含まれるグロウコゲニンの全合成を最終目的として,平成10年度はグロウコゲニンAに含まれるFuro[2,3-b]furan骨格部分の合成を検討したので以下に述べる. 市販の1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-マンニトール(1)を出発原料として,四酢酸鉛でジオール部分で酸化的に切断してアルデヒド(2)に導き,続いてTriethyl 2-phosphonopropionateを用いたWittig-Homer反応を行ってエステル基の導入を検討したが,望むエステル基とアセトニド基がシス体のエステルを主成分として得ることが出来なかった.そこでまずFuro[2,3-b]furan骨格の合成を検討することとした.先のD-マンニトールアセトニド(1)を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化的に切断し,後処理することなく炭酸カリウム,Triethyl phosphonoacetateを加えることにより,E体のα,β-不飽和エステル(3)が好収率で得られた.(3)のエステル基をDiisobutyl aluminum hydlideで還元してアルコール(4)に導き,続いてTriethylorthoacetate中Hydroquinone存在下に加熱還流すると容易にClaisen転位が起き,β-位にビニル基のあるエステル(4)が好収率で得られた.4を80%メタノール中塩酸を加えアセトニドの加水分解と同時にラクトン化を行うとβ-ビニル-γ-ヒドロキシメチル-γ-プチロラクトンが得られた.ビニル基をアルデヒド基に変換後酸処理をすれば,環の巻換えが起きFuro[2,3-b]furan骨格の形成が期待できる.他方,γ-ブチロラクトンから直接Furo[2,3-b]furan骨格の合成も検討している.γ-ブチロラクトンをDIBAHLで還元してラクトールに導き,続いてマロン酸モノエチルと縮合させた後ジアゾ化,Rh_2(OAc)_4によるインサーション反応で目的の化合物を得ようとしている。
|