研究概要 |
本研究は反応場における酵素の基質認識を様々な分子を用いて系統的に研究し,加水分解活性,立体選択性,そしてリミテーションを明らかにすることを目的としている。最初に代表的な加水分解酵素の一つであるCandida rugosa由来のリパーゼ(以下CRLと略す)について,種々の濃度の2-プロパノール水溶液と処理することによる活性部位の立体構造の変化について詳細に検討した。その結果、立体構造の変化は2-プロパノール濃度が約30%のところで起こっていることが明らかになった。そこで未変性(dlosed型)と変性(open型)の2種のCRLを用いて以下の検討を進めた。直鎖飽和脂肪酸(炭素数2から12)のp-ニトロフェノキシエステル類の加水分解反応を行った結果、open型がclosed型よりも加水分解活性が高いが、炭素数と加水分解活性の関係は同じであった。その傾向は炭素数が2の時に最小となり、炭素数が4および8で極大となる曲線となった。また酵素動力学解析の結果、血値は炭素数の増大とともに小さくなっていくことが明らかになった。これらの結果は、アルキル鎖が入るCRLのトンネル部が奥になるに従って細くなり炭素数が5から6のところで折れ曲がっているというX線構造解析のデータと一致するものと推測された。一方メチル2-フェニルプロパノエイトを用いた立体選択的加水分解反応はopen型で立体選択性(E値)が200を越えた。この場合CRLの立体構造の変化とともに2-プロパノール処理によるタンパクの精製が起こっていることが示唆された。
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