研究概要 |
太陽光と水から新エネルギー資源を創製するための人工光合成系構築において,最も重要な水の酸化触媒系を設計,研究した.触媒としては,当研究室で以前から進めているルテニウム-アンミン錯体を中心に検討した. Ce(IV)イオンを酸化剤として用いた化学的水の酸化において,触媒としてのcis-[RU(NH_3)_4Cl_2]^+が1分子で水の4電子酸化を行うのに対し,このtrans-型は2電子酸化能力しかないため,2分子が協同的に作用して水の4電子酸化を行うことを見出した.この種の触媒で問題になる2分子的分解は,錯体をナフィオンなどの高分子膜中に固定化すると抑制できる.trans-型錯体のナフィオン膜中における見かけの触媒活性(単位時間当たりの触媒のターンオーバー数)は,触媒濃度を高めると極大を経て減少し,さらに濃度を高めると活性が再び増加することを見出した.これを,水の酸化触媒活性,2分子の協同相互作用距離,2分子的分解距離,多核化による高活性錯体の生成というパラメーターにより解析した.膜中の触媒の無秩序的分散を考慮して錯体間最近接距離の分布を取り入れた式をたてて解析した結果,実験データとよくフィットしたものとなり,新しい提案となった.このtrans型は,これまで調べた内では最も触媒活性が高いことが分かった.
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