研究概要 |
本年度は、研究実施計画に従い、ポリ-L-グルタミン酸に5-アミノ-1,10-フェナントロリン基を側鎖カルボキシル基のアミド化により導入し、その一部の錯体化によりルテニウムトリスビピリジン類似錯体導入ポリ-L-グルタミンを合成した。また、フェナントロリン基の一部をトリメチレン架橋し、ピオローゲン類似構造電子受容体としたポリ-L-グルタミン、また、それ自体がレドックス活性であり、かつ電子供与基となるフェロセン基を側鎖に導入したポリ-L-グルタミンを合成した。これら高分子におけるクロモホア配向を円二色性により評価するとともに、レドックス基の活性をサイクリックボルタンメトリーにより検討し高分子への導入によっても活性が保持されていることを確認した。一方、高分子への導入によりルテニウム錯体の励起寿命は約1.2倍となり高分子への導入が熱的失活の抑制につながることが明らかとなった。これら電子供与基、電子受容基によるルテニウム錯体の分子内電子移動消光の検討に先立ち、これらの外部添加による電子移動消光を評価したところ、効率よく電子移動が進行することが示された。現在、これら電子供与基、電子受容基を同時に導入した高分子を合成し、蛍光消光、励起寿命の測定により分子内電子移動消光効率の検討、励起エネルギー・電子伝達素子としての評価を行っているところである。インタクチックポリメタクリルアミドについては、内部、外部消光剤を用いてナフチル基間の励起エネルギー移動の二次構造依存性を検討し、側鎖アミド基間の水素結合によりポリ-L-グルタミン同様のヘリックス構造が形成された場合に励起エネルギー伝達能が約1.6倍に向上するなど、ポリ-L-グルタミンと同様に励起エネルギー・電子伝達素子として有用であることが明らかとなった.
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