研究概要 |
共役性の高い非重合性の官能基を利用することにより,高重合性で高環化率のポリマーを与えるジエンの設計が可能であることを示してきた。本研究では,この考えの妥当性を確認するため、N-フェニル-N-メタクリロイル-2-(メトキシカルボニル)アリルアミン(PMMA)及びN-メチル-N-メタクリロイル-2-(メトキシカルボニル)アリルアミン(MMMA)のラジカル環化重合挙動を検討した。両モノマーの対応する1官能性化合物の内N-置換-N-イソプチリル-2-(メトキシカルボニル)アリルアミンは単独重合性を有していないことを確認した。もう一方の対応する1官能性化合物に相当するN,N-ジ置換メタクリルアミドの非重合性は良く知られている。モノマー濃度0.56MでPMMAは完全環化ポリマーを与え、MMMAは環化率が92%のポリマーを生成した。両ジエンとも高い重合性を示し,これまでに提唱してきた考えの正当性を支持する結果が得られた。両モノマーのα-置換アクリル基の共役性は高いが、N-置換-N-メタクリロイルアミノ基の共役性は見かけと異なり低いことが判明した。これらの事実及びpoly(MMMA)のペンダント基がメタクリロイル基のみから成ることから、両ジエンの重合はα-置換アクリル基側から進行するものと推定された。立体配座解析の結果、MMMAのアミドC-N結合の回転は可能であるのに対し、PMMAではその回転は束縛されていることが明らかになった。PMMAは環化に好都合なシス型配座のみからなっているため、環化率が100%のポリマーを生成するのに対し、MMMAでは環化不可能なトランス型配座も取ることが可能なため、PMMAに比べ低環化率のポリマーが生成するものと結論された。これらの結果は学会における口頭発表を済ませ、現在学会誌に投稿準備中である。今後は先に提出した申請書の計画に従い、さらに研究を展開する予定である。
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