研究概要 |
共役性の高い非重合性基をを利用することにより高環化率のポリマーを与える1,6-ジエンの設計が可能であることを、種々の非共役ジエンのラジカル重合挙動の検討により示してきた。本研究では、そのような考えの下に設計されたモノマーの1つであるN-フェニル-N-メタクリロイル-2-(エトキシカルボニル)アリルアミン(1)のアニオン重合挙動を調べた。1はラジカル重合では完全に環化した主に5員環からなるポリマーを与える。アニオン重合では開始剤・溶媒等の重合条件を変えるとポリマーの構造が大きく変わり、ラジカル重合とは異なる観点から高分子の構造制御の可能性があることは良く知られている。当研究室にでもそのような例を幾つか報告してきた。1では種々のリチウム化合物やGrignard試薬を用いて重合を行ったが、生成高分子の構造はラジカル重合により得られたポリマーの構造と同じであった。これは、溶媒への1の溶解性が低く重合を高温で行ったためと、メタクリロイル基のカルボニル基により対カチオンと成長アニオンおよび(ないしは)モノマーとの強い相互作用が妨げられたためと思われる。その他かさ高な置換基と非重合性基を有する1,6-ジエンの環化重合性を明らかにするため、N-置換-N-(メタ)アクリロイル-2-(アルコキシカルボニル)アリルアミシのラジカル環化重合を検討した。N-位のかさ高な置換基は環化性を高めるが重合性を抑制すること、かさ高なアルコキシ基は重合性を高めるが環化傾向については僅かに向上させるだけであることを見出した。N-位のかさ高な置換基は2つのC=C結合を環化に好都合な配座に強制するためであり、かさ高なアルコキシ基は成長反応速度よりも停止反応速度の抑制により強く作用するため、全重合速度を高めると推定される。これらの結果は口頭発表を済ませ、学会誌に投稿準備中である。
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