研究概要 |
1. O-アクリロイルアセトフェノンオキシムをモノマーに用いて、アシルオキシイミノ(AOI)基をもつ共重合体(コモノマーは主にスチレン)を合成し、キノン類を添加した共重合体フィルムの光照射による架橋(不溶化)および光照射後加熱による不溶化について検討した。 2. キノン類として1,4-ベンゾキノン(BQ)、2-クロロ-1,4-ベンゾキノン(CIBQ)、2-ドデシルチオ-1,4-ベンゾキノン(DSBQ)および1,4-ナフトキノン(NQ)をもちいて、上記共重合体の光開始・熱架橋について検討した結果、NQが最も優れていることが分かった。この結果はNQが高圧水銀灯の254および313nm光を効率よく吸収するためと説明された。DSBQ以外は光照射によりフィルムは不溶化し、加熱によってもさらに不溶化は進行した。しかし、DSBQの場合は光不溶化はほとんど起こらないが、後加熱によって不溶化が進行することが明らかになった。 3. 光不溶化は酸素の存在によって抑制されることから、AOI基の分解によって生成したポリマーラジカルとキノン類のラジカル反応であると考えた。 4. アミノ基を導入した共重合体にキノン類を添加し熱架橋を検討したところ、上記のキノンのいずれの場合も効率よく不溶化が進行した。 5. 光および熱架橋いずれいおいてもキノンがヒドロキノンに還元されることから、光架橋ではポリマーラジカルの関与した架橋、熱架橋ではポリマー中に生成したアミノ基とキノン類のマイケル付加反応による架橋であることを明らかにした。
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