自己組織性とイオン伝導性との関係を明らかにするために側鎖型液晶性ポリエーテルを合成し、得られた側鎖型ポリエーテルとアルカリ金属塩との混合系の熱転移挙動およびイオン伝導性について検討した。イオン伝導性高分子としては、ポリエチレンオキシドと類似構造をもつ一環系側鎖型ポリエーテルを用いた。一環系側鎖型ポリエーテルは側鎖末端のメチレン鎖が4から12でスメクチック相を発現した。これらの液晶性あるいは非液晶性ポリエーテルと過塩素酸リチウムとの混合系においてもスメクティク相が観察された。液晶温度範囲は塩濃度が増加するにともない広くなった。非液晶ポリエーテルと過塩素酸リチウムとの混合系で液晶性が発現する理由のひとつとして側鎖末端のメチレン鎖の結晶性があげられることを見いだした。X線回折測定より混合系が発現するスメクチック相の層間隔は液晶性ポリエーテルのみが発現するスメクチック相より狭くなることが明らかになった。混合系の過塩素酸リチウムの解離は、カチオンであるリチウムイオンはX光線光電子分光測定により、一方アニオンである過塩素酸イオンはラマンスベクトルによりそれぞれ確認した。 混合系の塩濃度が高いときにはイオン伝導の温度依存性はヒステリシスを示した。一方、塩濃度が低いときは混合系のイオン伝導度の温度依存性をVogel-Tamman-Fulcher(VTF)の式を用いて検討ところ、活性化エネルギーが等方相よりも液晶相の方が大きかった。このことから等方相と液晶相でイオン伝導の機構が異なると考えられる。
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