自己組織性とイオン伝導性との関係を明らかにするために、主鎖骨格にエチレンオキシド鎖を有する主鎖型および側鎖型液晶性高分子を合成し、これらの高分子に過塩素酸リチウムを混合した系がイオン伝導性を示すことを見いだした。側鎖型高分子の側鎖は、芳香族一環系からなり、その末端メチレン鎖が4から12でスメクティック相を発現した。一方、それ以上の長さの末端基をもつ側鎖型高分子では結晶性は発現しなかった。 これらの液晶性の側鎖型高分子と非液晶性の側鎖高分子にそれぞれ過塩素酸リチウムを混合すると、いずれもスメクティック相を発現した。非液晶性の側鎖型高分子と過塩素酸リチウムとの混合系においてスメクティック相が発現する理由のひとつとして側鎖末端のメチレン鎖の結晶性があげられることを見いだした。X線回折測定より混合系が発現するスメクティック相の層間隔は液晶性側鎖型高分子のみが発現するスメクティック相より狭くなることが明らかになった。 過塩素酸リチウムをポリマーユニットに対して同じ割合で混合した系では、液晶性を示す側鎖型高分子は、非液晶性を示す側鎖型高分子に比べ高いイオン伝導性を示した。またいずれの混合系も塩濃度が増加することによってイオン伝導性は増加した。 一方、ビススチリルベンゼンからなる主鎖型高分子は、単体および過塩素酸リチウムをポリマーユニットに対して0.04の割合で混合した系はスメクティック相を発現したが、塩濃度が0.11の割合で混合した系では、ネマティック相を発現した。これらの二つのイオン伝導性を比較したところ、ネマティック相を発現する混合系の方がスメクティック相を発現する混合系に比べイオン伝導性が大きくなることがわかった。 また、この主鎖型液晶性高分子は、ヨウ素ドーピングやUV照射によってシスートランス異性化がおこる。この高分子は、トランス体では液晶性を示すが、シス体では非液晶性であった。トランス体およびシス体の高分子を用意し、それぞれ過塩素酸リチウムをポスターマーユニットに対して0.11の割合で混合した系のイオン伝導性を比較したところ、液晶性を示すトランス体の混合系の方が、非液晶性であるシステム体の混合系よりも高いイオン伝導性を示した。
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