これまでの高分子合成において、重縮合は逐次重合で進行するため生成高分子の分子量及び分子量分布の規制は困難とされてきた。我々は重縮合が付加重合や開環重合と同様に開始剤から連鎖重合で進行すれば、分子量規制された単分散高分子が得られると考え、検討してきた。本研究ではモノマーと成長ポリマーを2相に分離して行い、電子求引基が生成しないような一般的モノマーまで適用可能な縮合的連鎖重合法を検討する。今年度は本プロモメチル-2-n-オクトキシ安息香酸カリウム塩1の水相-有機相の4級アンモニウム塩を用いる相間移動触媒重合、および1を有機溶媒中に分散させた固相-有機相のクラウンエーテルを用いる相間移動触媒重合を検討した。いずれの重合も開始剤として臭化4-ニトロベンジルを用いて室温で行った。水相-有機相の相間移動触媒重合では、開始剤量に対応する理論分子量どおりのポリエステルが得られた。しかしながら、分子量分布は広かった。そこで重合挙動をモノマー転化率に対して追跡した結果、重合初期は目的とする連鎖重合が進行し、重合中期から最大10%の一般的重縮合(逐次重合)も進行していることを明らかにした。固相-有機相の相間移動触媒重合では、開始剤量に対応する理論分子量どおりのポリエステルが得られた。分子量分布は1.3以下であった。さらにモノマー転化率に対して生成ポリマーの分子量は比例して増加した。また、開始剤末端と成長末端の比が転化率に寄らず常に1:1であった。以上の結果から固相-有機相の重合では、目的とする縮合的連鎖重合が進行していることを明らかにした。
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