高反応性官能基としてチオール基に着目し、新規生医用材料の開発を目的としてチオール基を有する生体内分解吸収性高分子の合成について検討を加えた。具体的には、グリコール酸とシステインからなる環状デプシペプチドと乳酸ダイマーであるラクチドとのランダム共重合体poly[LA-random-(Glc-Cys)]およびブロック共重合体poly(Glc-Cys)-block-polyLAの合成と特性評価を行い、以下の結果を得た。 1)グリコール酸とチオール基が保護されたL-システインからなる新規環状デプシペプチドcydo[Glc-Cys(MBzl)]とラクチドとの開環共重合により得られたコポリマーを脱保護することにより、ランダム共重合体poly[LA-random-(Glc-Cys)]の合成に成功した。 2)THF中でのアルカリ金属を用いた2段階の開環重合と脱保護により、種々の組成を有するブロック共重合体poly(Glc-Cys)-block-polyLAの合成に成功した。 3)poly-[LA-random-(Glc-Cys)]とポリ乳酸との結晶性の違いを示差走査熱量測定により検討した結果、デプシペプチド・ユニットの含有率の増大に伴い、共重合体のTg、Tmおよび結晶化度が低下することが見出された。 4)非酵素条件下でのpoly[LA-random-(Glc-Cys)」の生分解性について検討した結果、デプシペプチドユニットの含有率が増加するにつれて、結晶性が低下して分解性が増すことが明らかとなった。 5)フィルム表面のチオール基の定量を行った結果、poly[LA-random-(Glc-Cys)]表面に比べてpoly(Glc-Cys)-block-polyLA表面の方がより高密度にチオール基を集積できることが見出された。
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