ポリぺプチドのへリックスセンス反転機構を明らかにするため、側鎖にアゾべンゼン基を結合し、アゾべンゼン基の光異性化に伴う主鎖・側鎖のコンフォメーション変化を核磁気共鳴(NMR)により調べ、以下の結果を得た。 (1)poly(β-n-propyl L-aspartate)(PnPLA)は溶媒中では温度上昇に伴い右巻α-へリックスから左巻へ可逆的にへリックスセンス反転し、^<13>CNMRスぺクトルの化学シフトは両者で全て異なる。転移は可逆的で、その温度領域は40〜50℃である。この転移エネルギーは110kJ/molである。ジクロル酢酸-重ク口口ホルム系での側鎖の距離角度情報を得た。 ジクロル酢酸1〜3%では右巻α-へリックス、3〜5%では左巻α-へリックス、5%以上でコイル状態であった。スピン結合定数^3J_<αβ>から求めた内部回転角X_1は、右巻α-へリックスではg^-が90%でtが10%、左巻α-へリックスでは両者が50%であった。両へリックスで側鎖構造が異なる。 (2)アゾべンゼン基の導入量を増やすため、又光異性化の影響が主鎖に及び易いように、アゾべンゼン基のメチレン基が少ないphenylazobenzylalcoholを合成し、これとL-aspから、単量体を得た。これとβ-n-propyl L-aspとからアゾべンゼン基量が多い高分子を合成したが、十分な分子量の試料が得られず、現在反応条件を検討中である。 L-asp-β_R-dをL-aspartaseとフマル酸より酵素合成した。反応条件を改良して、収量を60から90%、重水素化率を90から95%に上げることが出来た。これより、上記のアゾべンゼン基とn-プロピル基を結合した単量体をそれぞれ合成した。今後この試料の高分子を得て重水素NMRの固体/溶液両者における緩和時間を測定して、光異性化によるコンフォメーション変化のダイナミクスを側鎖から調べる予定である。
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