研究課題/領域番号 |
10650883
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大越 豊 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40185236)
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研究分担者 |
後藤 康夫 信州大学, 繊維学部, 助手 (60262698)
奈倉 正宣 信州大学, 繊維学部, 教授 (70021178)
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キーワード | 電気抵抗 / 電気伝導度 / 曳糸性 / 紡糸性 / 繊維形成能 / 高速度カメラ / 繊維の破断 / 繊維構造 |
研究概要 |
曳糸性とは物質が持つ“糸を引く"性質のことであり、材料の繊維化に必要不可欠であるのみならず、食品分野や生物学分野でも重要な物性である。"曳糸性"は物質の粘度と相関が深いが、必ずしも粘度のみで決まるものではなく、非線形流動(加工硬化)の程度や試験条件、特に歪速度が大きく影響する。本研究では、無機塩法アルミナ繊維紡糸液について、自作した曳糸性試験装置を利用して液状糸引き上げの際の電気抵抗変化プロフィールを測定した。同時に高速度カメラによる観測も行い、各測定での破断距離を測定してこの距離で糸長を規格化し、重ね合わせた結果、いずれの測定・測定レンジについても比較的良く揃ったマスターカーブが得られた。このマスターカーブにおいて、観測された電気抵抗プロフィールは糸長の3〜6乗に比例する領域、電気抵抗がほぼ2桁もステップ的に増加する領域、および電気抵抗が糸長に対して直線的に増加する領域、の3つに分けられ、第1と第2の領域の境界はネック状変形の発生と増加、第2と第3の領域の境界はネック状変形の数が飽和することに対応していることが分かった。また、糸直径ムラ(ネック状変形)が必ずしも直接的に液状糸の破断と結びついていないことも確かめられた。このことは、古典的なキャピラリー破断・凝集破断理論では、この系のような曳糸性に富む系の曳糸性を説明できないことを示す。ネック状変形後の"細い"領域では、ゾル・ゲル転移もしくはゾル相とゲル相の相分離により、ゲル糸が形成されている可能性が高い。
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