研究概要 |
曳糸性とは物質が持つ"糸を引く"性質のことであり、材料の繊維化に必要不可欠であるのみならず、食品分野や生物学分野でも重要な物性である。"曳糸性"は物質の粘度と相関が深いが、必ずしも粘度のみで決まるものではなく、非線形流動(加工硬化)の程度や試験条件、特に歪速度が大きく影響する。また、実際の繊維形成時には、通常温度や組成を変化させて最終的に固化させるため、繊維形成時の"曳糸性"(通常"紡糸性"と呼ばれることが多い)はより複雑なものとなる。 これまでに報告されている"曳糸性"の測定法は、いずれも基本的には材料を一定温度下で引き伸ばした際の最大の伸びを使用している。測定のほとんどは目視に頼るものであり、曳糸性の発現機構に関する考察も定性的なものにとどまる。そこで我々は、無機塩法アルミナ繊維用紡糸液について液状糸の電気抵抗変化を利用し、その破断形態及び破断までの直径変化を定量的に測定する装置を製作した。また、電気抵抗の測定と同時に高速度カメラによる撮影を行うことによって、液状糸の電気抵抗変化がどのような液状糸の状態を反映しているかを確認した。さらに従来システムよりも高感度かつ連続的な測定が可能な電気抵抗測定装置を備え,試料温度300℃以下,雰囲気温度-10〜100℃で制御可能なシステムを使用して無機塩法アルミナ繊維用紡糸液にづいて液状糸の電気抵抗変化を系統的に測定した。その結果、紡糸液の組成・温度と粘度、動的粘弾性的性質との関連、これらの紡糸液物性および雰囲気温度・引き上げ速度が曵糸性および破断までの細化プロフィールに及ぼす影響を定量的に評価することができた。
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