コロイド結晶に対する印加電場は、コロイド結晶の格子定数の変化を引き起こすため、以下のような電気光学効果が現れた。(i)波長選択効果:一般にコロイド結晶を構成するコロイド粒子は負に帯電しているため、電場印加によって粒子間隔の伸縮がおこる。これによりブラッグピークは短波長または長波長シフトする。これはすなわち電場印加により反射光の波長選択ができるということを意味し、ディスプレーとしての基本的な特性を満足する。(ii)位相差発生効果:コロイド結晶の構成粒子はその電気二重層も含めるとミクロンオーダーの大きさとなるため、速い周波数変化に対しては位相遅れを生じる。位相遅れの度合いはコロイド結晶の結晶弾性率と密接に対応している。(iii)波形変換効果:結晶に矩形波を印加して反射光強度の時間変化を観察したところ、応答波形は三角波となった。コロイド粒子と水しか存在しない非常にシンプルなコロイド結晶系に、このような波形変換能力があることが示された。(iv)高調波発生効果:電極に正弦波を印加してその周波数や電場強度を変化させると、ほぼ完全な2次高調波を応答波形として得ることができた。高速反射スペクトル測定装置による時間分割測定で、コロイド結晶の2つの結晶構造、面心立方格子(fcc)と体心立方格子(bcc)の存在が高調波発生の一因であることが判明した。さらに、コロイド粒子自体にも電場応答の非線形性があることがわかった。(v)波動伝搬効果:コロイド結晶の電場印加による運動は、電極間の実際に電場が印加されているところより遥かに遠くでも観測された。これはコロイド結晶に粘弾性的性質があるためにおこると考えられる。(vi)残響効果:コロイド結晶には、電場印加を止めてもその周波数での運動をしばらく続ける残響効果があることが示された。
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