研究概要 |
本年度は、側鎖構造を変化させたL-トリプトファン(Trp)含有ポリペプチドを調製し、TFA処理した時のpHに対する色変化およびTFA処理ポリペプチドと嵩高いアニオン性薬物との相互作用について検討した。 まず初めに、L-トリプトファン(Trp)とγ-ベンジルL-グルタメートから成るランダムコポリペプチドを従来のNCA法により合成した。分子量とTrp含率は、NMRと粘度測定から、それぞれ20mol%と280,000であることを確認した。得られたTrp含有コポリペプチドをエタノールアミンおよびアルカリケン化により親水性化し、側鎖に水酸基を有するコポリ (N-ヒドロキシエチルL.グルタミン/Trp)とカルボキシル基を有するコポリ(L-グルタミン酸/Trp)を調製した。次に、これらTrp含有コポリペプチドをTFA処理した時の色変化を可視光スペクトル測定により調査した。TFA処理したコポリ (N,ヒドロキシエチルL-グルタミン/Trp)は、pH4〜5.5で色変化する事が確認され、また、同組成からなるハイドロゲル膜をTFA処理する事により、色と吸水率などの膜物性が同時に変化する新規のpH応答性材料を調製することができた。 一方、TFA処理したコポリ (L-グルタミン酸/Trp)は、pH7〜8で赤色から黄色に色変化する事を確認し、カルボン酸の導入により、TFA処理したTrpの解離を中性pHにシフトさせる事が可能となった。そこで、TFA処理したコポリ (L-グルタミン酸/Trp)が赤色を示すpH7において、アニオン性低分子を添加した時の相互作用を可視光および蛍光スペクトル測定から調査した。その結果、酢酸、オクタン酸などの低分子を添加しても、何ら変化がないのに対し、ワルファリンやフェニルブタゾンなどの嵩高いアニオン性薬物を加えると、赤色から黄色への色変化が起こり、Trp残基の発する蛍光が大きく消光されることを確認し、TFA処理したTrp残基と嵩高いアニオン性薬物とが静電および疎水相互作用することを明らかにした。
|