本年度は、TFA処理したL-グルタミン酸(Glu)とL-トリプトファン(Trp)から成るランダムコポリペプチドのマイクロスフェアーを調整し、アニオン性薬物との相互作用およびペプチドマイクロスフェアーからの溶出挙動について検討を行った。 まず、ランダムコポリ(Glu/Trp)[GAT]を従来のNCA法およびアルカリケン化により調製した。次に、このコポリマーをTFA処理することで赤色に呈色し、アルカリ領域で黄色に呈色変化する、pH応答性ランダムコポリペプチド[GAT-T]を得た。得られたコポリマーを蒸留水に溶解し、25wt%PMMAのトルエン/クロロホルム溶液に分散させた後、架橋剤として20%(v/v)ヘキサメチレンジイソシアネートを加えて撹拌反応させることにより、粒径が数10μmのペプチドマイクロスフェアーを調製した。 PH7において、Trp残基が解離し赤色に呈色したGAT-Tマイクロスフェアーは、嵩高いアニオン性薬物であるワルファリン(Wf)、フェニルブタゾン(Pb)およびクロフィプリン酸(Cf)を添加すると、静電および疎水性相互作用により結合して、黄色に呈色変化する。そして、薬物が完全に溶出すると赤色に戻ることを確認した。また、アニオン性薬物との相互作用およびマイクロスフェアーからの溶出挙動を調査したところ、未処理のGATに比べGAT-Tマイクロスフェアーでは、結合量が遙かに増加するとともに、溶出時間が長くなり、薬物の保持能力に優れることが明らかになった。なお、3種の薬物で比較すると、pKaの低いCf、Ph、Wfの順にマイクロスフェアーと強い相互作用を示した。 以上のことより、GAT-Tマイクロスフェアーは、薬物の吸脱着を色変化で認識できる材料であることが明らかとなり、薬物除法システムへの応用が期待される。
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