我々が発見したコロイド結晶中における粒子間距離が塩濃度の関数として極大を取る現象について、超小角X線散乱法を中心に、その詳細とコロイド結晶形成の根元的メカニズムを調査した。その結果は、以下のように纏められる。 (1)極大点は「固液相転移点」である。すなわち、これより低塩濃度側では固体様コロイド結晶であり、高塩濃度側では液体構造である。 (2)液体構造側での挙動は、古典的なDLVO理論で定量的に説明できる。 (3)極大点に置いては、粒子間距離は物理的に可能な最大距離になっている。すなわち、それより低塩濃度側では、イオン雰囲気の異常な重なりが生じている。 (4)この異常な重なりによりカウンターイオンの「共有」が生じ、これが引力的相互作用を生み出し、コロイド結晶の原動力となる。 (5)この原動力は、カウンターイオンがプロトンの時強く、他のイオン、すなわちナトリウムや、カリウムなどでは弱い。この事実は、カウンターイオンの動きが原動力に関与する重要な因子であることを証明している。 (6)電荷数や粒径のことなるコロイド粒子を混合すると、一定の条件下で合金様構造が形成される。その構造は超小角中性子散乱により詳細に調査できる。このような合金構造は新たな機能材料開発の基礎となりうる。
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