研究概要 |
本研究の目的は,人工オリゴヌクレオチド単分子膜におけるセグメント間の相互作用様式を解明し,より高度に構造制御されたオリゴヌクレオチド薄膜の設計指針を得ることにある. 昨年度合成に成功したチミン機能化両親媒性高分子(1)について,本年度は,まず気水界面での単分子膜特性を明らかにしたのち,相補的塩基対であるアデニル酸(Aあるいはそのオリゴマー(oligoA)やポリマー(polyA))との相互作用を検討した.具体的な研究成果を以下に述べる. (1)チミン合有1の表面圧(π)-面積(A)曲線は,チミン基をもたない対照化合物(2)に比して,著しく膨張した.また,コモノマーのメタクリル酸の解離状態にも強く依存することを見出した. (2)水相にA,oligoAならびにpolyAを添加したとき,1のπ-A曲線はわずかに低面積側にシフトし,両者の相互作用を示唆した.また,それぞれの単分子膜の累積膜を調製し,FT-IRスペクトルを測定した結果,チミン-アデニン間の相補的水素結合を介した相互作用が明らかとなった. (3)1/A,oligoAまたはpolyA界面錯体の融解温度を200nmにおける吸光度変化より検討した.その結果,モノマーであるAとの錯体は全く融解現象を示さず,塩基対は積層していないのに対して,1/oligoAおよび1/polyAはいずれも明確な融解温度を示し,天然DNAの二重らせん構造に類似する塩基対間のスタッキング構造の形成を強く支持した.また,溶液中と累積膜状態との比較から,後者において,長距離塩基対間の相互作用にもとづくより高次な構造形式が達成され,二次界面場の有用性が明らかにされた.
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