絶縁状態の布表面に帯電した電荷の、空気中への飛散による電荷の減衰過程を測定し解析することにより、布を作っている高分子鎖と結合した水の結合状態について知見を得ることができる。このことを明確にするために、平成10年度では、表面電荷の測定をより精度良くできるよう、表面電位計を購入し帯電電荷の減衰測定をおこなった。その結果、これまでの測定結果と同じ結果が、より精度良く測定されることが確かめられた。さらに、平成11年度では10種の表面組成の異なる、主として、帯電防止用に新しく開発された新素材の衣服用裏地について、詳しい測定を行うことにした。電荷の帯電は、特に水の影響が大きいため、試料が測定環境条件に十分に平衡になるよう、長時間測定環境と同じ条件の恒温恒湿器の中で調湿を行いさらに測定を行う人工気候室内で帯電電荷測定を行う前に1時間以上放置し調湿してから測定を行った。実験を行った温度は15、20、25℃で相対湿度は30、45、60、75%とし、人工気候室の制御可能な条件全てについて、摩擦帯電電荷の時間減衰過程を15分間測定した。すなわち、最初の2分間は10秒おきに、2分以後は30秒おきに測定を行った。測定結果を解析した結果、電荷が遠い減衰をする過程と、長時間にわたるゆっくりと減衰する2つの独立した電荷減衰の過程があることがわかった。布表面に存在する水には高分子鎖と強く結び付いている、いわゆる結合水と、自由に存在する、いわゆる、自由水が存在すると言われているが、水分子が空気中に飛散するときに、それぞれにトラップされた電荷を独立して減衰させると考えると実験結果をうまく説明できるが、これまでの実験結果と異なるところもあり現在詳しい解析を行っている。
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