絶縁状態の布表面に帯電した電荷の空気中への飛散による電荷の減衰過程を測定し、解析することにより、布を作っている高分子鎖と結合した水の結合状態について知見を得ることができる。この結果の再現性を明確にするために、初年度では、表面電荷の測定をより精度良くできるよう、測定精度のよい表面電位計を購入し帯電電荷の減衰測定をおこなった。その結果、これまでの測定結果と同じ結果が新しい電位計により精度良く測定されることが確かめられた。さらに平成11年度では13種の表面組成の異なる、帯電防止用にに新しく開発された新素材の衣服用裏地を含めた試料布について測定を行った。電荷の帯電は、特に水の影響が大きいため、試料が測定環境条件に十分に平衡になるよう、長時間測定環境と同じ条件の恒温恒湿器の中で調湿を行い、恒温恒湿室内で帯電電荷測定を測定を行った。測定結果を解析した結果、2つの電荷減衰過程が存在することがわかった。電荷が速い減衰をする過程は布表面の化学構造に関係し、一方他のゆっくりと減衰する電荷減衰の過程は表面の性質に関係の少ない過程であることがわかった。布表面に存在する水には高分子鎖と強く結び付いている結合水と、自由に存在する自由水が存在すると考えられる。この時、電荷はそれぞれ独立して空気中に飛散することが実験結果から推察される。しかしながら、これらの実験結果の解釈にはさらなる検討が必要であろう。
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