研究課題/領域番号 |
10650894
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
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研究分担者 |
沖 雄一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 共通研究施設, 教授 (20004434)
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
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キーワード | 陽電子消滅 / 緩和現象 / 極低温 / 高分子構造の凍結 / ポジトロニウム / ポテンシャル / ガンマ転移 / ベータ転移 |
研究概要 |
陽電子消滅法では、高分子中で陽電子がポジトロニウム(Ps)を形成することを利用して、Psの寿命スペクトルを得ている。これから得られる情報は、Psの寿命とこの寿命に相当する強度I3である。高分子間の空隙に捕捉されたPsは空隙の大きさに相関した寿命で消滅することを利用して、空隙の大きさを定量的に求めることができる。一方、強度から、高分子の立体構造、化学構造、構造の動きなどを知ることができるが、最近、光効果の実験から強度の意味について理解が深まった。 Ps長寿命成分の強度は、一般に、Psは空隙の中で消滅することから空隙の量に相関した量で、強度が大きいと空隙の量が多いという説明がなされてきた。高分子の化学構造、立体構造、温度等が一定の条件を満たせば、長寿命成分の強度と空隙の間には比例した相関があると考えられる。しかし、大抵の場合、異なった試料で強度を比較することは単純ではなく、特に、試料を極低温(〜100K)に冷却すると強度が増加し、空隙の量とは全く関係していないことが起こる。この低温における増加を、光を照射することにより消すことができるため、増加は光で消滅した電子に関係することが説明されている。このような電子は、線源から放出された陽電子が高分子内でイオン化した結果生まれたもので、電子は極低温で構造が凍結した高分子間にできたポテンシャルに次々とトラップされる。これは線源による放射比が時間とともに進み、トラップされる電子の数が時間とともに増加し、陽電子は浅く捕捉されたこれらの電子と結合してPsを形成するため電子が増えるとPsの強度が増加する。高分子の緩和現象は、メチル基やセグメントの運動がある一定の温度になると動き出すことであり、この運動により近傍にできていたポテンシャルが消失し、Ps生成強度が急に減少し始める。高分子の緩和現象をPs強度がこのようにして反映することになる。
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